翻訳アメコミ(主にマーベル)のレビュー・感想を置くところ。オタクが奇妙なテンションで推しを語ったりするよ! ていうかそれしかしてない! 絶版モノも扱ってます。ネタバレがめっちゃあるのでお気をつけください。
2013年、ミュータントには処刑か強制収容所への拘留のいずれかの運命が待っていた。
この暗黒の歴史を塗り替えるべく、ケイト・プライドは、全ての悪夢の始まりである1980年へとタイムスリップを試みる!
歴史改変ストーリーの先駆けとして大きな反響を呼び、映画最新作の原作ともなった名作「デイズ・オブ・フューチャーパスト」を完全邦訳!
さらに、X-MEN誕生からの歴史を振り返る総集編、地上最強の魔導師Dr.ストレンジ、カナダのヒーローチーム、アルファフライトとの競演など、全7編を収録!
現代のアメリカンコミックスの原点となった、クリス・クレアモント-ジョン・バーン-テリー・オースティントリオの名作がここに甦る!

それにしても、この第8巻では、ピーターのなげきもまったくもっともで、忍耐の限界を超えているようです。なにしろ、こともあろうに、メイおばさんが宿敵ドクター・オクトパスと結婚しようとするのですからね。
さらに、石あたまの怪人ハマーヘッドも加わっての混戦で最後には、原子炉の大爆発。
そのうえさらに、いよいよグリーン・ゴブリン二世の登場です。

十二指腸潰瘍に悩むスーパー・ヒーローなんて、アメリカのコミック・ブックの歴史40年のあいだにも、聞いたことがありませんが、わがピーター・パーカーことスパイダーマンは、その最初としての名誉をになうことになります。
しかし、この第7巻でのスパイダーマンは十二指腸潰瘍どころのさわぎではありません。恋人のグエンドリン・ステイシーが死んでしまったからです。ふつう、マンガの世界では、主要な登場人物が死ぬということはないのですが(たとえば、「スーパーマン」では、恋人のロイス・レインが死んだなんて話は聞いたことがありませんね)、マーベル・コミックスでは、しばしば、こうした読者をびっくりされる重大事件が起きるのです。

スパーダーマンのコミックスは、スーパー・ヒーローものの形をとりながら(もう、みなさんもお気づきだと思いますけれど)ひとつの青春の物語になっています。
ここでは、主人公であるピーター・パーカー青年が、さまざまな人間関係のなかで、思い、憎み、試練を経て成長していくありさまが、ていねいに描かれいます。
問題は、その人間関係で、この第6巻には彼をめぐる2人の女性が、重要なからみあいを見せます。それも、老いた女性とうんと若い娘――つまり、メイおばさんと、グエン・ステイシーの2人です。
おばさんに向かって、グエンドリンが、「あなたはピーターのことを、かまいすぎるのよ。過保護で、あの人をダメにしちゃうんだわ」という意味の言葉を、はっきり言ってしまったので、また事態はややこしくなってしまいます。
しかし、そんな気持ちのもつれを通して、ピーターとグエンのあいだの感情が、ぐんぐん、たかまっていきつつあることに、みなさんは気づかれると思います。ピーターにはグエン以外の女性はいないし、グエンにはピーター以外の男性はいないということを、おたがいがはっきり意識してしまいます。
それにしても、こうしてスパイダーマンのコミックスを読み続けてみると、つくづく、グエンというのはいい女だという気がしますね。心やさしく、思いやりがあり、明るく、細かい所によく気のつく娘……その誠実な人柄は、だれの心をも暖かくしてくれます。わたし自身も、読んでいるうちに、ピーター・パーカーとおなじ気持ちになって、グエンの心の動きが気になってくるのですが、しかし、2人の感情のたかまりが頂点に達したとき、思いがけない事件が起こります。
「スパイダーマン」のコミックス史上最大の衝撃であったその悲劇は、次の第7巻に描かれます。どうかお見逃しのないようにね

スパイダーマンのからだから、4本の手がはえてきたのは、アメリカ版のコミック・ブックでは、1971年のことでした。
ところで、この日本版第5巻をお読みになればおわかりのように、そのあと、彼は吸血人間モービウスに出会い、その事件のなかで、はえたばかりの余分の4本の手は消え、スパイダーマンは、もとの姿にもどります。せっかく「スパイダーマン」100号記念に、スタン・リーが考え出した異変なのにあっさりとやめてしまったのには、わけがあります。
この6本の手を扱うようになった新しいスパイダーマンに対し、読者から、抗議の投書が殺到したのです。あまりにグロテスクだ、安易な設定だ、いくらクモが8本足だからって、これじゃ子どもだましの怪物じゃないか――それで、マーベル・コミックスとしては、あわてて、彼をもとの姿にもどさなければならなかった、というわけです。
また、この巻では、グエンドリンの水着姿がはじめて紹介されています。ギル・ケインの描く彼女は、なかなかセクシーだと思いませんか。それに、ピーターとグエンがいっしょに旅に出る(それも南極の果てまで)なんてことも、珍しいではありませんか……。
