バリー・ウィンザー=スミス
ウエポンX
ローガン にアダマンチウムが移植されてウルヴァリンが誕生する話。
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■感想性癖にささった……(-人-)これは良い作品……。物語としては、
X-MEN ウルヴァリン:オリジンの後、ひとり放浪していたローガンはいかにしてウルヴァリンになったか、という話です。ウェポンX計画がどのようなものであったか、というのが詳細に語られています。
その描写がですね……めっちゃ、好きな感じだった……。
実験の様子がいちいちリアリティあって細かい! しかも研究員は皆、ローガンを人として見てない。物のように扱っている。
意識を残したまま身体をひらいたり、精神干渉でラジコンのように意のままにあやつったり、どのくらい再生するのか見るためにマイナス15度の雪山に全裸で一晩放置したりとやりたい放題。研究者はそうでなくっちゃぁ!ウルヴィを操ってクマと戦わせたりは平気でするのですが「じゃあ人間とも戦わせてみよう」となったら急に「実験用の人間なんて……」と怖気づく……。
じゃあ君たちが今おもちゃにしているそれは何なんだよ……。ウルヴィを人間として見てない、というのが非常によくあらわされているセリフに心震える……。
あと、
ウルヴィが暴走したときに実験の首謀者の教授が「ウエポンXを殺せ!」とか「殺害しろ!」ではなく、「ウエポンXを破壊しろ!」とナチュラルに言ってたのも物あつかい……。それと、ラリー・ハマによるあとがきの解説が興味深かった。このウェポンXという作品はシナリオ、描き文字、絵、カラーの全てがバリー・ウィンザー=スミスひとりの手によって描かれたものであり、本来ならアメコミはそのあたりは分業することが多いです。
ラリー・ハマーはこの部分について、
「このウェポンXという作品は、ひとりで描かれたからこそ、ふきだしの位置やカラーなども表現のひとつとして効果的になってる!」と解説しています。僕も趣味で漫画を描いていますが、やっぱりあらかじめふきだしをいれる位置も考慮してコマわりや構図を取るんですよね。
分業だとそれができない(やらなくて良い)のか~と、”一人で漫画を描く”(背景などはアシスタントさんを雇うこともありますが)ということを当たり前に見てきた僕たち日本人との文化の違いを感じました。
また、
「このコミックはセリフが短くまとまっていて、キャプションで長たらしく説明をしていない」とも言っていて、そのあたりも、日本の漫画はそれが普通(たまにめちゃくちゃセリフ多いのあるけど)に比べて、昔のアメコミは「小説かよ笑」くらいキャプション多いな~と、そのあたりの文化も面白いなぁと思ったり。
ウルヴィファンにオススメ……と言いたいところですが、実験の様子でとにかくウルヴィがかわいそうなので、耐えられる方に読んでほしいです。