翻訳アメコミ(主にマーベル)のレビュー・感想を置くところ。オタクが奇妙なテンションで推しを語ったりするよ! ていうかそれしかしてない! 絶版モノも扱ってます。ネタバレがめっちゃあるのでお気をつけください。
もう一つの『デス・オブ・キャプテン・アメリカ』の物語
キャプテン・アメリカの死は彼に関わった者達の胸を激しく揺さぶった。
ウルヴァリン、アベンジャーズ、ホークアイ、スパイダーマン、アイアンマン……キャプテン・アメリカが死んだ日、彼らは何をしていたのか。
各々の立場から稀代の英雄の死を描く。
全米を揺るがせた国民的ヒーローの死に始まる新たなる英雄伝説、いよいよ完結!
シビル・ウォーの果てに政府に投降したキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース。
全米注目の初公判が始まろうとしたその時、凶弾が彼の胸を貫いた。
運命の引金を引いたのはレッドスカルの部下ドクター・ファウスタスに洗脳された、ロジャースの恋人シャロン・カーターだった。
謎の暗殺犯を追ったバッキーとファルコンらは、全てはレッドスカルの策謀だった事実に気づく。
一度は対立したものの、亡き友への友情で結びついたバッキーとシールド司令官トニー・スタークは、共にスカルの陰謀の粉砕を誓い合う。
しかし、スカルの魔の手はシールドを蝕み、シャロンをもその手中にしていたのである。
スティーブ・ロジャースの子をその身に宿した彼女を……。
超人登録法の是非を巡る対立は、ついにヒーロー同士の内戦=シビル・ウォーへと発展した。
登録法反対派を率いるキャプテン・アメリカは、アイアンマンら、圧倒的な戦力を誇る支持派に対し、ゲリラ戦を仕掛けるも、人々の命を守るという己の使命を見失っていた事を悟り、自らマスクを脱いで投降した。
ここにシビル・ウォーは集結し、全超人は政府の管理下に置かれる事となったのである。
キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースの初公判が迫る中、行動を開始する地下に潜った反対派達。
だが、これを好機と見たのは、彼らだけではなかった……。
自由のシンボルたるキャプテン・アメリカの死を描き、全米に衝撃を与えた話題作。
この「キャプテン・アメリカ」第4巻では、これまでに明らかにされていなかった悪役たちの秘密を、私たちは知ることができます。
まず、日本版に新登場の悪役として、バロン・ストラッカーが出てきますが、彼も、ヒトラー時代の残党です。
もうひとつ注目すべきは、AIMの指導者であるモードックのオリジン(誕生のいきさつ)がこの巻で明らかにされたことです。
また、やはりこの巻に姿を見せる地下帝国の主、モウルマンにも、あわれみを感じてしまいます。モウルマンは、そもそもは、ファンタスティック・フォーの悪役として登場したのですが、ここで詳しく、その生いたちが描かれているのも、ファンとしては見逃せません。
それから、この巻ではさらに、キャプテン・アメリカとファルコンの関係に、重要な事態が起こります。
キャプテン・アメリカは、またもや悩んでいます。特に、この第三巻では、悩みかたが、ますますひどくなっていくようで、これでは、とてもスーパーヒーローは務まらないのではないかと心配になってしまうほどですが、これには理由があります。
第三巻におさめられたエピソードは、本国版の1968~9年に描かれたものですが、いまからちょうど10年まえのアメリカは、まさに混乱の時期でした。
60年代の終わりは、ベトナム戦争への批判がたかまり、それとともに、学生たちが大学当局に疑問をなげかけ、学園騒動がひろがっていきます。
ケネディ大統領につづいて、マルティン・ルサー・キング師の暗殺……そんな、アメリカの屋台骨をゆさぶるような事件のなかで、キャプテン・アメリカという、過去からよみがえった英雄は、すっかりとまどってしまうのです。
いま読み返してみると、これも、ひとつの時代の記録になっていることがよくわかります。マンガだけに、アメリカ人の気持ちが、正直にあらわれているという気もします。
しかし、この悩みがキャップを生きさせているわけでもありますから、シールドのニック・フューリーがせせらわらおうと、恋人のシャロンがあいそをつかせようと、キャプテン・アメリカの<悩み節>は、まだしばらくはつづきそうですね。