フランク・ミラー (著), デビッド・マツケリー (イラスト)
デアデビル:ボーン・アゲインあらすじ引用(引用元:上記リンクページより)
恐れを知らぬ男とは、希望を失くした男なのか…
『ダークナイト・リターンズ』のフランク・ミラー、伝説のハードボイルド大作、ついに邦訳!
かつての恋人に裏切られ、宿敵キングピンに正体を知られてしまったデアデビルことマット・マードック。
仕事を、友を、コスチュームまで奪われた彼に残されたものとは…。
高貴なるヒーローの転落と再生を描く、男泣き必須の伝説的名作。
四半世紀の時を超え、ついに邦訳なる!
名作『バットマン:イヤーワン』のフランク・ミラー/デビッド・マツケリーコンビの原点であり、
アメリカンコミックスの歴史を塗り替えた、屈指の名作!
***
■感想全員気が狂ってやがる。やたらと評判が良くてプレミア価格にまでなっていたので何事かと思いましたが、読んで納得。面白いです。
序盤数ページですでに面白い。最初は「ちょっと分厚いから何日かかけてじっくり読もう」と思っていたのに、読み始めたら目がはなせなくて一気に読んでしまいました。
デアデビルの正体がキングピンにバレ、電気が止まり電話も止まり弁護士資格まで剥奪され自宅も無くし。これ全部第1話で起こった出来事。ものすごいスピード展開。自分を陥れる相手の正体がわからず半狂乱になるマット。
フォギーのことすら疑いはじめたと言えば狂いっぷりが伝わるでしょうか。
さらには一般人に襲いかかったり(全ての人が敵に見える)、時報に電話して会話したり……完全に病んでます。やばい。
でもヤバイのはマットだけじゃない。カレンもヤバイ。そもそもデアデビルの正体がバレたのはカレンがマットを売ったから。
映画スターになると言って事務所を抜けたカレンは映画には出たものの一発屋だったようで、その後落ちぶれてヤク中に。そしてヤク欲しさにデアデビルの正体がマットだという情報を売ってしまう。
これ1ページ目の出来事。そのせいでマットが何もかもなくすという状況に陥ったのに、カレンにキングピンの追ってが迫ると「私を助けてくれるのは彼しかいない」ってマットを頼る。
正常な思考じゃねぇ……。
マットの元にたどり着くまでにも、盲目の乞食から金を盗んだり、知らない男に抱かれて代わりにアメリカまでつれて行ってもらったり、追ってが来たときに「どうせ死ぬなら最後にイッパツ」っと注射器に手を伸ばしたり……。
で、そのマットとカレンですが、出会ってどうなったかというと……
マットを売ったことを謝罪するカレンに、マットはキスをして優しく抱きしめ、彼女の望む通りの言葉をかけ、最適な頃合いに食事を与え、背中をなでて眠りを助けた……って
パッと見はマットの慈悲深さに感動するところなんですけど……これはどう考えても共依存。あ、アカンやつや……。
さらには宿敵キングピンもだいぶキてる。
このときのキングピンの状況は、マットのせいでヴァネッサを失った後だったので(関連:
Marvel X10,11,12)とにかくマット憎しで執着している状態。
キングピンのヴァネッサへの愛の重さは彼のアイデンティティですらあるのでいかに彼がマットを恨んでいるか語らずともです。
さらにさらに、初登場のヴィランもキマってる。
顔にアメリカの国旗をペイントをして覚せい剤で常に思考がまともに働かない、という設定で、まちなかで銃乱射。でも悪意は無く「祖国のため! 祖国のため!」っていうシンプルに頭のおかしなタイプのヤツです。(後に設定変更されウルヴィと因縁付けられた)
主要な登場人物が全員狂ってやがる。後半はやや大味かなと思いましたが前半の引き込みが半端ないのですごく面白かったです。
新聞記者のベンが事件に巻き込まれてキングピンの部下に脅され、取材を諦めようとしたときにジェイムソンが言った言葉がかっこいい。
「なぁ、ユーリック。この商売では絶対に忘れちゃならん事がある。ネタから逃げるな。逃げれば記者失格だ。こっちには世界最強の援軍がついてるんだぞ。500万の読者だ。市長でも、大統領でもひっくり返せる力だ。その読者のために、何年もキングピンを追ってきたんだ。お前がやらずにどうする?」
この記者魂かっこいい。スパイディの話で出てくるときはだいたいケチンボで怒鳴り散らすばかりだけど、こういう一面を見せられてしまうと憎めないんだよなぁ……。
そしてこれが見事にオチへの伏線になっているのもすごい。